N-moca LIGHT

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愛犬が星になった~火葬編~

犬の老後で私がいちばん不安だったのは、死んだことの確認だった。

人間の場合だったら必ず医師が確認するけれど、犬はどうするべきなのか。動物病院にはできるだけお世話になりたくないけれど、それなのに死んだ確認を獣医師にしてもらわないといけないのかな。

という、今思えばすごくどうでもいいことが気になっていたけど、結論から言うと、死んだら冷たくなって固まるので心配しなくても自分でわかる。

犬が星になったのは13時半頃のこと。なんとなく日曜に星になって月曜に火葬というイメージを私が勝手にしていたので、今日はまだだろうと思い、食後のコーヒーを隣の部屋でのんびり飲んでいた。

ほんの10分ほどのことだったと思うけど、自室に戻るとトイレシートにオシッコがいっぱい出ていたので、「たくさん出たねえ!よかったねえ!」と声を掛けるとすでに息を引き取っていた。死ぬ前に大量の排泄をすると聞いていたけど、本当にその通りだった。

死ぬ2日ほど前から、水を飲めなくなった。それでもずっと口を軽く開けて息をしているので、乾燥予防のつもりで濡らす程度に水を与えていた。喉のほうにはいかないように。反対側から出てくるのをタオルで受け止めて。

そんなふうに息をしていてお腹が動くのも見てわかったし、痩せてガリガリになっていたので心臓が動くのも見るだけでわかった。

なので自室に戻って汚れたトイレシートに手を伸ばしつつお腹に目をやった時に、息を引き取ったことはすぐにわかった。

それでもやはりまだ温かいので不安で、何度も心臓の辺りを触ってみたり、耳を近づけて音を聞いてみたりしたけど、たしかに体の動きはすべて止まったようだった。

両親は離れて住んでいるので母に電話で死んだことを伝えたとき、動物は腐敗が早いので火葬も早いほうがいいと言っていたけど、私はなんとなく気が進まなかった。それでも火葬場の予約も必要なのでとりあえず市の担当課に電話し、火葬場から折り返しの電話がきたとき、希望の日時を聞いてくれたので「明日の午前で」とお願いすることができた。

死後硬直は2時間後くらいから始まるらしいけれど、棺に入らなくなったら困るので、すぐに脚を折り曲げた。まだ息をしているうちに練習していたのもあって、すんなりできた。

私の場合は、こうして一晩共に過ごせたのはとても良かった。たしかにもう動かないので死んだ当日に火葬に出してもいいのだけれど、やっぱりもう本当にこの体に魂は宿っていなくてただの抜け殻なのだ、ということをしみじみと感じる時間は必要だった。だって火の中に入れるわけだから。

冒頭にも書いたように、老犬介護を覚悟したときに最も不安だったのはこの「死の確認」だったけれど、それはこの時間をとることで満たされたと思う。

ちょうど少し前に母の友人の愛犬が他界し、そのときにダンボールを張り合わせて棺を作っていたと聞いて、ドッグフードのダンボールなんかを張り合わせて作ったけれど、それを見た母に「大きすぎる」と言われて嫌になり、ネットで検索しているうちにもう既製品を買っちゃおうという気になった。

それでこちらを注文。

store.shopping.yahoo.co.jp

でも結果的に買って本当によかった。自分的に想定外だったのは、ふたがある良さ。ふたなんて格好ばかりで必要ないのに、と思っていたけど全然そんなことはなかった。

腐敗を防ぐために氷を入れた袋をおなかと胸と後頭部に当てていたのだけど、氷なのですぐ溶けてくる。だいたい数時間で溶けてしまう。けれどもふたをすることで多少の保冷効果はある。

夜布団に入るまではふたはしていなかったけれど、寝る前に犬の上にバスタオルをかぶせ、ふたをして、朝起きて開けたら少しひんやりしている感じがあった。

それから、ふたを開けたときに、少し臭いがした。やはり死後少しずつ臭いは出てくるので、それを防ぐ効果もあった。

そして最も意外だったのは、火葬炉に入っていくときに、ふたがあったほうが気持ちが安らぐということだった。これがもし手作りで布テープだらけの貧相な棺だったら後悔したと思う。既製品を買って本当によかった。

犬が死んですぐ脚を折り曲げて、棺にシーツを敷いてその上にトイレシートを敷き詰めて犬を寝かせ、氷を抱かせて安置していたんだけど、氷を入れた袋の結露がすごいようで、布を巻いていたけどトイレシートはびっしょり濡れていた。

それも一緒に火葬できるかは自治体によって違うのかもしれないけれど、うちの場合はなんとなくダメそうな雰囲気(フードなども入れてはダメ)だったのと、このジェルも一緒に燃やすのはかわいそうだな、と思ったので、出棺前にトイレシートと氷を入れていた袋を取り出し、棺の中はシーツ、遺体、バスタオルだけ、という状態にしておいた。

母の運転で火葬場へ。着くと係の人が待ってくれていて、最後のお別れを促してくれて、人の時と同じように火葬炉に入っていくのを見送った。数珠を持っていなかったけれど、とっさに手を合わせた。

その後、事務所にて書類に記入し、料金を払い、これですべてが終了した。犬の登録は、この書類をもって削除してくれるらしい。あとは家に残った犬のものを処分するだけだ。


毎年、狂犬病予防接種とフィラリア予防だけは必ずしていたけれど、今年は春にもうヨボヨボだったので内緒でパスしようと、放置していた。

その後、あわてて動物病院に圧迫排尿を習いに行くことになり(私が不安がらなければその必要もなかったんだけど。)、そのとき先生にそれらのことを何か言われないかドキドキしたけれど、先生もあまりの老衰ぶりに必要ないと判断したのか、それについては黙ってくれていた。ありがたかった。

2年半前に突然後ろ脚に痛みを感じた様子で鳴きわめいたのが、最初に不調を感じたときだった。心配だったので病院で調べてもらうと、血液検査で腎臓に要注意の結果が出た。それでも同時に上がるはずの数値は正常とのことで、あまり気に留めていなかった。

その状態を維持したままとくにどこか悪化するわけでもなく、時とともに腰が曲がったり歩けなくなったり最後には寝たきりになったりという感じで、典型的な老衰だった。天寿を全うしたと思う。それが何よりの救いだ。

犬を飼うとどうしても犬中心の生活にならざるを得ない。(そうでない人もいるようだけど。)なのでもう当分飼いたくない。命の重さは十分に知った。これからは犬のために急いで帰る必要もない。近いうちにのんびり一人旅にでも出ようと思う。


犬の死後についての本をいろいろ読んで要約している、とてもありがたいページを見つけた。

www.interq.or.jp

それによると、犬は魂の存在であることを自覚しており、体に執着はないのでお骨についても「好きにして」と思っているらしい。うちの犬もきっとそう言うだろうと思う。何しろわたしとよく似た子だったから。

もう姿はこの世に存在しないが魂はいつも傍にいる。誰よりも私があの子を知っている。それだけで十分だ。またいつか動物を家族に迎えるときが来ないとは限らないけど、しばらくは心の中にいる彼女とともに過ごしたい。

 

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2003年-推定1ヵ月-初めてうちに来た日

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2003年-3ヵ月

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2007-2012 4歳-12歳

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2015-2020 12歳-16歳10ヵ月